まめ・ストリート・ジャーナル。

書評や映画評を中心に思った事を書いてます。(ローソンのからあげクンよりも愛されたい)

9年ぶりにマットデイモン復帰!しかしもはや目的を失った男の暴走「ジェイソン・ボーン」があまりにも残念な作品だった話。

ボーンシリーズ9年ぶりの新作となる「ジェイソン・ボーン」を見ました。

f:id:mametankusan:20170317153820p:plain

ボーンシリーズと言えば、第1作目「ボーン・アイデンティティー」から続く謎の殺し屋ジェイソンボーンを描く3部作(一応、ボーンアルティメイタムで完結した事になっている・・)なわけですが、過去作品は本当に素晴らしかった。本作を観る前に3部作全てをブルーレイで見直しても尚、傑作だと思ってます。個人的に2作目「ボーンスプレマシー」が名作だと思ってます。

本作はその続編として9年ぶりに主演「マット・デイモン」。監督「ポールグリーングラス」という名タッグです。公開前からファンの間では「ボーンが帰ってきた」なんて注目が集めてましたが、正直に結論を申し上げますと本作は・・

目的を見失った男の暴走。 

でしかありません。

例えば、1作目「アイデンティティー」では漁船で保護されるボーン。尻に埋め込まれた銀行の口座番号。ボーンとはいったい誰なのか、そしてCIAが計画した殺害計画の陰謀とは何か。みたいなものがテーマなわけです。結局、ずっと謎が続くわけです。ボーンスプレマシーでのパメラランディを含めたCIA調査員がいる拠点の向かいのビルに待ち伏せて(お前の隣にいる)っていうシーン。そこで流れる音楽がまた俊逸なわけです。

・あらすじ

f:id:mametankusan:20170317153724p:plain

ボーンが消息を絶ってから何年もの歳月が経過したある日、元同僚であるニッキーはボーンを見つけ、彼にある真実を告げる。それはCIAが世界中の情報を監視し、技術開発やテロ活動までをも裏で操作する事を目的とした、恐ろしい極秘プログラムが始動したというものだった。姿を現したボーンの追跡を任されたCIAエージェントのリーは、彼が最も求めているものを提供すれば、再びCIA側に取り込めるのではないかと考え始める。しかし“史上最も危険な兵器"であるボーンは、追跡者が想像すらできない、ある目的を持って動いていた・・・。 

Amazonより引用

あらすじを補足するとすれば、明らかにGoogleのCEOであるラリーペイジ的な人物がAIを開発して、それを使ってアメリカ人を監視しよう、あまりに進歩した機械へに対する疑問符を投げかけるというのが裏テーマでもあります。例えば、あるシーンでボーンがバイクで逃げるシーンがあるんですが、それをラングレーにあるCIAの本部の職員。本作におけるリー(アリシア・ヴィキャンデル)がAIを使って、逃走ルートを予測する。それをガニ股で待ち構える工作員のアセット(ヴァンサン・カッセル)。そのルートが見事に一致する。いゃいゃちょっと待て!と・・。ボーンシリーズって逃走中に電車の時刻表を時計でチェックするとか、コインロッカーのヘビーユーザーである事が魅力の作品でしょー。そんなチート使ったらダメダメ。

・父親の愛については触れない。

本作のキーとなるのがボーンの実の父親です。あまり語れませんが、実はCIAにおいて・・という役割を担っていて、それが全ての鍵となる存在なわけですが、それについての記述が殆ど無いわけです。父親との過去のためにボーンは戦うわけですが、その親子愛に対する描写が無いためにボーンに感情移入できない。一緒にカフェでお茶をしているシーンを入れたから全てを察しろとは虫が良すぎます。

・ある意味で怖いジェイソンボーン。

トミリージョーンズ演じるCIA長官のロバート・デューイ。この人が実はある計画の実行者の1人だった、というのが大筋な流れなんですが、CIA長官が関与している時点でおそらく大統領も絡む案件であって、ましてはCIA局員であるリーがタッチできる場所ではない。本作はある意味ではご都合主義であって、勧善懲悪です。悪者を倒せば全てが完結する。ディープドリーム社CEOであるアーロン・カルーア(リズ・アーメッド)が言うわけですよ、我々は悪魔に魂を売ってしまったと・・。Google的に言う(邪悪になるな)的な事なんですが、本家のCIAなんてもっと酷いですからね。それを言うなら過去作品でエシュロン(電話などを傍聴できるシステム)を平気で使って携帯の通話とか盗聴してたわけですからね。

で、結果的に言うと一番の悪党はデューイではなくリーだと僕が思ってます。

最後のある会話ですよね。

そしてボーンが残した置き土産。散々、善人ぶって最後があれですから、女の人って怖いです。たぶん本作がイマイチだった理由の大きなポイントがスプレマシーから登場した事実上のヒロインであるパメラランディがあまりにも魅力的すぎた部分にあると思います。

続くのか完結したのか分からないラスト、2008年公開でアカデミー賞受賞の「ハート・ロッカー」のラストみたいな感じの終わり方です。
最後、エンドロールで(まじでポールグリーングラスが撮ったのか)って思ってました。ボーンシリーズが好きならいいですが、初見で1作品として見ると全体的な評価はイマイチです。

結局、CIAもアメリカも変わらないというメッセージを伝えながら、去っていくボーンの姿は寂しいです。